従業員数が10人未満の事業所には、就業規則を労働基準監督署に届出する義務はありません。しかし、今回ご相談いただいた会社はサービス業を営む会社で、営業所が19か所あり、各営業所とも従業員数は10名未満で、会社全体の従業員数は約90名でした。これは小売店・飲食店・理美容店・エステサロン・調剤薬局などの業種ではよくあるケースです。
社会保険労務士とのトラブル
その会社は従来から社会保険労務士と契約しており、諸手続きは社会保険労務士に委託されていました。しかし、その社労士が事務手続代行しかせず就業規則の届出も怠っていたため何かトラブルがあったらしく、税理士さん経由で私に紹介がありました。
会社の希望と実態調査
会社の希望は「社内で規律(ルールとマナー)を守らない従業員が多いので何とかしたい」という内容でした。社内実態を調べると、各営業所は離れた場所にあり本部から目が行き届かず、従業員の自由度が高いことが分かりました。昔から「従業員に与えられている自由度が高ければ高いほど会社組織は複雑になる」と言いますが、正にその状態に陥り労務管理することを断念している状況でした。
就業規則の作成と届出
そこで、経営者に創業当時の思いと今後の会社に対する考えを聞き、それを反映させた内容の就業規則をタタキ台として提示し、協議を重ねて作成しました。その際に、私が最も意識したのは
①明文化されず暗黙知となっている会社の規則/ルール/慣習を「見える化」すること
②各従業員が果たすべき役割を出来る限り明確にしていくこと
の2点でした。
(A)従業員の雇用区分を明確にし、
(B)評価制度を多少変更し、
(C)給与体系を分かりやすい内容に改め、
(D)育児介護休業等に関する規則やハラスメント防止規程も作成し、
(E)経営者の思いと考えを記載した就業規則
を労働基準監督署に届出しました。
労務管理の徹底
年次有給休暇の事後申請や始業時刻に関する規則など労務管理の初歩的な事柄を各営業所に徹底しました。その結果、ある営業所長からハラスメントと思われる行為の通報があり至急対応することになりました。
就業規則の重要性
この会社で私は就業規則を作成し労働基準監督署に届出しましたが、それを社内に浸透させるのはこれからです。就業規則を創ってもその内容を社内に浸透させなければ意味がありません。過去に、就業規則を蔑ろにしていた為に「未払い残業代請求」や「懲戒処分無効で訴えられた」ケースがありました。裁判所でも一番最初に確認するのは就業規則の内容ですから、1つ一つの事業所の従業員数が10人未満でも会社全体で10人を超える場合は明文化された就業規則が必須だと考えます。